遊星ローラーねじの革新的生産技術
ブログに遊星ローラーねじの記事を書きました。まだ見ていない方はぜひ先にそちらのブログをご覧になってください。
ここに出てくる名称で「遊星ローラーねじ」と「遊星ローラースクリュー」の2つがあります。基本的には同じなんですが、100年前に発明されて先に市場に出ていたのはこの遊星ローラースクリューです。
勘の良い方は、それって何が違うの?と思われたでしょう。そして、遊星ローラースクリューはボールねじの10倍ほどの価格に対して遊星ローラーねじはボールねじと同程度の価格であるとも書きました。
具体的に何が違うのか、何が画期的だったのかを説明いたします。
▶遊星ローラースクリュー
全ての部品が精密切削加工で製造されます。
ナットの内径ギアと遊星ローラー端部のギアで完全同期回転します。スピンドルと遊星ローラーのねじ部が双方らせんねじで噛み合います。
=製造に非常に高い技術を要します。
=製造コストが非常に高価です
=非常に高い定格荷重を持ちます
=回転制御が可能です。

▶遊星ローラーねじ
全ての部品が非切削加工である転造圧延加工で製造されます。ナット内径の水平溝と遊星ローラーの端部溝が噛み合って剪断荷重を受けます。スピンドルの螺旋ねじと遊星ローラー中央部の水平溝で噛み合います。
=塑性加工である転造製造により大量生産に向いています。
=製造コストが安価です。
=非常に高い定格荷重を持ちます。
=繰り返し位置決め精度がありません。



生産技術の応用と独自のアイデア
本製品の生産技術の変更(応用)は、精密切削加工から大量生産に適した「転造製法」への移行にとどまりません。この製品は、スピンドル径が5mmから25mmまでの範囲で標準生産されていますが、すべてのナットの長さは同じです。その理由は、内部に組み込まれている「遊星ローラー」がすべてのサイズで共通であり、変わるのは使用するローラーの本数だけだからです。
例えば、5mmスピンドルには3本の遊星ローラーが入っており、スピンドルが太くなるごとにローラーの本数も増加します。これにより、ナットの直径は変わりますが、全長は常に同じに保たれています。
さらに、遊星ローラーは溝の位置が少しずつずれており、3種類(A、B、C)を使用します。上下方向を反転させることで6パターンの組み合わせが可能です。
スピンドルねじの螺旋を平面に展開すると斜面となり、その角度はスピンドル径により変わります。1周の斜面に遊星ローラーが均等に配置され、例えば5mm径には3本、9mm径には6本のローラーを配置することで、定格荷重を増加させています。
ボールねじの球による点接触とは異なり、ねじ山の面接触による剪断荷重を活かすことで、ナットを長くすることなく十分な定格荷重を確保できます。ただし、ナットの定格荷重が非常に大きいため、スピンドル軸の座屈強度を超えてしまうことがあります。したがって、使用方法には十分な確認が必要です。
なお、ナットも転造製法で製造されています(キー溝は切削加工)。ナットには標準で予圧がかけられており、ガタつきはありません。ナットは左右に2分割され、間座によって予圧が調整されています。取り付け時には、ハウジングがナットを軸方向に抑えることで、内部予圧が自動的に適切に発生する仕組みになっています。



