トラブル事例 シリーズ①

私が過去経験したトラブル事例集です。
今回は記憶に新しい昨年の出来事。

アプリケーション:工作機械テーブルベアリング
トラブル:傾き剛性がやたらと悪い

販売前の製品説明と違うじゃないかと呼ばれて現地組み立て現場へ駆けつけたところ、ベアリングを前に皆さん怖い顔・・・
ボルトをすべて外して手順通りに組直しを行う。しかしうまくいかない。製品の不具合か?と疑いましたが何かがおかしい。周辺部品の図面とにらめっこしながらうなり続ける。

結局その日は解決せず、持ち帰り検討することに。メーカーに相談するがそんなはずないと要領を得ない。

数日後お客さんからベアリングテーブルベッドの外周部分にスラストベアリングを設置して傾き剛性を上げる案が出て慌ててその設計に入りました。回転振れに影響を出さないようスラストニードルで提案しました。レース面はKMFのASSという焼き入れされた薄いシートメタルをテーブル裏に張り付けの後表面を研磨して仕上げるというものです。

しかし、お客さんにはこの研磨工程が困難であり却下されてしまいます。お客さんはスリムスプリットベアリングのスラストタイプを希望。それはレース面が用意されており軌道輪を嵌め込む溝加工のみで済むのでハードルは低い、しかし回転振れがどのような顕在化するか分からない事が多くしかも用途が公差う機械円テーブルなので制度保証が出来ないことからこれも却下。

そんなこんなでお客さんから対策に関する連絡が途絶えてしまい、こちらも心配になって状況伺いを立てるもののお客さんも良くわからないが機械納入先(大手工作機械メーカー)から何とか機械使用オペレーションで解決したようなことを言っているとのことで、問題は解決したとのことだった。

なんとも煮え切らないもやもやした状況だが問題が解決したなら良かったと、その後しばらく忘れていたが数か月後に事実が判明しました。

なんと、本体取付ボルト穴の深さと使用ボルトの長さが干渉して締めたつもりでもちゃんとベアリングを押さえつけきれていなかったのです。
図面上は干渉しない設計でしたが、「不完全ねじ部」の考慮を忘れて設計していたのが原因でした。

当方の知らないところで短めのボルトを使用したらピタリと傾きが収まったらしい。

コンマ5ミリでも浮いていたらわかりますが外見上締まっているように見えても、ボルト穴底でボルトが干渉してベアリングワッシャーに締め付け圧が掛かっていなかったのですね。

原因が判明してすっきりしましたが、早く言ってよ!と愚痴りたくはなりますよ。
長年メーカー勤務でしたのでクレームには慣れっこですが、お客さんの側にも誠実さを持ってほしいところですね。