スラストベアリングの選択肢
軸受の種類で軸方向の荷重を主に受けるベアリングをスラストベアリングと言います。
スラストニードル
スラストニードルなどは線接触となるニードルベアリングを持ちている為、非常に大きな定格荷重を持ちますが、回転方向の固定が出来ないのでラジアルベアリングと組合す必要があります。また、軸方向の押しと引きに対応する為2個のスラストベアリングが必要なので合計3つのベアリングを組み合わせて使用する事になります。

スラストボール
スラストボールベアリングは軌道面にボールが走る曲率があるのである程度の回転方向の支持は出来ますが荷重そのものはほとんど受けれるようにはできていません。このベアリングはラジアルベアリングは不要で2個のスラストボールベアリングで使用できますがラジアル荷重が掛からないよう注意する必要があります。

アンギュラーボール
アンギュラーボールベアリングだと2個1組でスラストとラジアル両方の荷重を受けれますがあまり大きなスラストには向きません。

クロスローラー
クロスローラーもスラストベアリングして使用できます。これは1個のベアリングでスラスト両方向、ラジアルを受けれるので少ないスペースで使用できます。転動体はローラーを使用しており大きな荷重を受けれます。モーメント剛性も強くなっています。
あまり小径サイズはバリエーションが少ない事と、ローラー端部が反対側の軌道面と滑りが発生するので高速回転すると発熱問題があります。

アンギュラーローラー
ちょっと特殊なベアリングでAXS、KXSというアンギュラーローラーベアリングがあります。2個1組で使用しますがクロスローラーの90度交互に入っているローラーを同じ向きで1列、反対向きに1列使用するという形になります。2個組で使用する必要がありますがクロスローラーよりモーメントに強く、ローラー端部の摩擦が無いので比較的高速でも回ります。特徴的なのは軌道輪(内外輪)が焼き入れ硬化処理された板金プレスを使用しています。切削加工で作られたベアリングと違い非常にコンパクトで軽量です。周辺構造も円錐状のシート面を用意し、ねじ込みによる予圧管理でベアリング自体の内部隙間は無くすべて自由に予圧を設定可能です。

*推奨使用例
弊社の扱っている遊星ローラーねじPWGは軸径に対して非常に大きな定格荷重を持っています。ボールねじの2倍から3倍の定格荷重があるので、従来ボールねじを使用していたところに、この遊星ローラーねじを使用すると同じ定格荷重でも軸径とナット径を細く出来てよりコンパクトになります。また、遊星ローラーねじはボールねじでは対応できない細かなピッチ(リード)が可能で0.75mmとなっており、これによりより小型のモーターを減速機無しで大きなトルクを発生するアクチュエーターの代わりとして構築できます。
しかし、たとえば一番細い遊星ローラーねじのスピンドル径は約5mmで動定格荷重が10kNあります。
内径5mmのスラストベアリングで動定格が10kNなど無く大きな外形になってしまいます。
AXS / KXSならローラーを使用しておりなおかつ薄いシートメタルを軌道面に使用しておりますので大変コンパクトで外径を抑えた形状で対応が可能です。
すなわち1本のシリンダー状の電動アクチュエーターで大きな推力を持つねじサポートベアリングとしては外径を遊星ローラーねじナットの外径と同等以下のサイズにしなくてはなりませんので、選択してしてはこのAXS / KXSが大変お勧めになっています。

弊社は上記のような特殊なベアリングを用いた周辺設計なども承っております。
設計ガイダンスの提供も申し付け頂ければ対応いたします。


