遊星ローラーねじの採用事例:油圧からの電動化を実現!

FT Engineeringのブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、高荷重かつ省スペースでの電動化に貢献する遊星ローラーねじの採用事例をご紹介します。

遊星ローラーねじとは?

遊星ローラーねじは、モーターの回転運動を直線運動に高効率で変換するメカニズムです。従来のボールねじやすべりねじと比較して、非常に大きなトルク変換が可能な点が最大の特徴で、油圧シリンダーの代替としても注目されています。

また、ねじピッチが約0.7mmと細かいため、小型で高速回転するモーターを減速機なし、または小さな減速比で直接使用することが可能です。これにより、装置全体の小型化や省スペース化、そして合理化に大きく貢献します。

高価だった遊星ローラーねじが身近に

遊星ローラーねじは、その優れたメリットにもかかわらず、内部構造の複雑さから製造コストが高く、汎用品の入手が困難でした。しかし、ドイツのシェフラー社が独自の生産技術を確立したことで、安価で高性能な遊星ローラーねじが手に入るようになりました。(FT Engineeringはシェフラー社の正規代理店です)遊星ローラーねじの詳しい原理については、過去の記事でご紹介しておりますので、ぜひそちらもご覧ください。

採用事例:ガスダンパーからの電動化

今回ご紹介する採用事例は、ガスダンパーを用いた昇降アーム機構を電動化したいというご要望からスタートしました。

【お客様の課題】

・既存のガスダンパー、電動モーター、ねじを限られた狭いスペースに収める必要がある。
・緊急時の最大荷重条件が大きく、通常のボールねじでは定格荷重が不足する。
・市販の電動アクチュエーターでは消費電力が大きく、サイズも大きすぎて導入できない。

そこで、従来のガスダンパーと同等のサイズで、電動アクチュエーターを新たに開発する必要がありました。

遊星ローラーねじが解決の鍵に!

この難題を解決するために採用されたのが、遊星ローラーねじです。

遊星ローラーねじを用いることで、規定のサイズに収めることに成功しました。さらに、小型で回転数の高いギアヘッド付きモーターを使用することで、消費電力も大幅に抑えることが可能になりました。

今回の事例で採用されたのは、シェフラー社のPWG05型。スピンドル径が約5mmと非常に細いにもかかわらず、なんと静定格荷重で1トンもの荷重を許容します。この事例では引っ張り方向での使用でしたが、圧縮方向で使用する際は、長さによってスピンドルの座屈強度を超える可能性があるので注意が必要です。

この実例は、お客様の厳しい条件に合致する手段が遊星ローラーねじ以外にはない、まさに「遊星ローラーねじでしか実現できないケース」でした。

コスト面でも大きなメリット

導入の要因としては、コスト面も挙げられます。遊星ローラーねじは、同サイズの精密ボールねじと比較して、同じ性能(定格荷重)であれば大幅に安価に入手できるため、トータルコストの削減にも貢献しました。この事例では精密な位置決め精度を必要としない機器だったため、上下限のリミットスイッチ設置のみで対応できましたが、精密な位置決めが必要な場合は、リニアスケールなどのセンサーとの併用も可能です。

遊星ローラーねじがもたらす未来

このように遊星ローラーねじは、油圧シリンダーに匹敵する推力を持ちながら、小型・小径で、使用する動力モーターも小型化でき、省電力を実現します。また、減速機なしでシャフトに直結できるため、部品点数の削減など、多くのメリットがあります。

FT Engineeringは、このような専用アクチュエーターの設計開発もサポートしております。省エネルギー化の流れが加速する現代において、油圧や空圧装置の電動化は避けられない方向性です。この遊星ローラーねじは、まさにその電動化に大きく貢献できる製品であると確信しています。

遊星ローラーねじにご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にご相談ください。FT Engineeringがお客様の課題解決に貢献いたします。