ボールねじサポートの常識を変える。「ハウジング設計不要」がもたらす設計合理化とトータルコストダウンの提案

昨今の機械設計において、コストダウンの要求は留まることを知りません。しかし、部品単価を数円単位で削るだけのコストダウンには限界があります。私たちFT Engineeringが提案するのは、「構造そのものを変えることによる、劇的なトータルコストダウン」です。

今回は、ドイツSchaeffler(シェフラー)グループ・INAブランドが提供する、ボールねじサポートベアリングユニット「ZKLRシリーズ」をご紹介します。これは単なる「安価なベアリング」ではなく、設計・加工・組立の工数を大幅に削減する「エンジニアリング・ソリューション」です。

1.従来の「当たり前」に潜むムダ

ボールねじのサポート側を設計する際、通常は以下のような構成になるかと思います。

•アンギュラベアリング(または組み合わせ軸受)

•精密加工されたベアリングハウジング(ブロック)

•押さえ蓋(カバープレート)

•オイルシール

•予圧調整用のシムや精密ナット

これらを一つ一つ選定し、図面を描き、厳しい公差でハウジングを加工し、熟練者が時間をかけて芯出しを行う……。この一連のプロセスにこそ、削減できる「見えないコスト」が眠っています。

2. INA ZKLRシリーズとは?

ZKLRシリーズは、複列アンギュラ玉軸受と、精密プレス成形された「フランジ付きハウジング」が一体化(インテグレーション)された製品です。最大の特徴は、「ベアリング自体がハウジングを持っている」という点です。これにより、以下の3つの大きなメリットが生まれます。

メリット①:部品点数と設計工数の削減

ZKLRを採用することで、これまで必要だった「ハウジングブロック」と「押さえ蓋」が不要になります。 また、シール(2Zまたは2RS)が内蔵され、グリースも封入済みです。 設計者は、機械の壁面にこのユニットを取り付ける穴位置を指定するだけ。部品点数が減ることは、手配の手間、在庫管理コスト、そして組立ミスのリスク低減に直結します。

メリット②:加工コストの削減と「芯出し」の容易さ

ここが技術的に最も面白いポイントです。 通常、ベアリングハウジングにはH7などの厳しい嵌め合い公差が求められます。しかし、ZKLRはフランジ面で機械に取り付ける構造が可能です。

•ラフな加工でOK: ベアリング外径を収める穴は、逃げ穴(クリアランスホール)で構いません。相手側部材に求められるのは、平坦度だけです。

•調整が簡単: 取付ボルト穴とボルトの間には意図的な「遊び(半径方向の隙間)」があります。この隙間を利用して、ボールねじの軸心に合わせてベアリングユニット全体をラジアル方向に動かし、位置が決まったところでボルトを締め付けるだけで芯出しが完了します。

従来のシム調整や、マイクロメーターでの計測といった職人技は不要です。

メリット③:ドイツ品質の信頼性と防錆処理

「低コスト=低品質」ではありません。ZKLRは以下の仕様を備えています。

高精度: P5以上の回転精度を確保しています。

高機能皮膜: ハウジング部にはINA独自の「Corrotect®(コロテクト)」防錆コーティングが施されており、一般環境下での錆の心配がありません。

最適化された予圧: 組立済みのユニットとして適切な予圧管理がされており、バックラッシのない剛性を提供します。

結論:Lean Design(贅肉のない設計)への転換

ZKLRシリーズは、半導体製造装置や医療機器、搬送機など、スペースとコストに制約のあるアプリケーションに最適です。 「部品単価」の比較表では見えてこない、「設計時間」「加工費」「組立調整費」を含めたトータルコストで比較すれば、その差は歴然です。

私たちFT Engineeringは、単にベアリングを売るだけでなく、お客様の機械装置のトータルコストダウンを実現する「構造提案」を得意としています。 「今の設計をもっとシンプルにできないか?」とお考えの設計者様、ぜひ一度ご相談ください。